海
「うーみーはー広いーなぁー、おおきーぃーなぁーーー♪」
今でもあのおちゃらけな歌声が聞こえて来そうで、波の音に耳を傾ける。
あれからもう、どれ位の月日が流れてしまったんだろうか。
長いようで短かった・・・出来る事なら、今すぐあの日に帰りたい。
それがかなわぬ願いなら・・・せめて僕もあなたと同じ場所へ。。。
あなたを失ってしまった僕は、今ここで生きている理由がない。
何度も君の居るところへ行こうとした・・・けれども神様はそれさへも許してはくれなくて。
少しずつ消えていってしまう君への記憶と、少しずつ増えていく僕の傷。
でも、それも今日で終わりにしよう。
今日こそ、あなたの元へ行かせてください。
神様お願いです。
僕の決断を許してください。
波打ち際で、波に濡れる靴。
今なら本当に、あなたが居るところにいけるかも知れない。
海の中へそっと足を進める。
そのまま行くはずだった。
後ろで僕を呼ぶ声さへしなければ。
「おにいちゃん、何処行くの?」
不意に後ろから声がして、慌てて振り返る。
まだ、小学生低学年だろうか?
ビー玉のようなまあるい瞳で僕の事をじっと見上げている。
ひとまず、小学生という事で、安心する。
「・・・遠いところだよ。」
「・・・お兄ちゃんもなの・・・?」
急にその子供が泣きそうな顔になる。「お兄ちゃんも・・・?」少年の言いたい事が理解できない。
ビー玉のような瞳に、涙を一杯にためている。
そして僕を見上げる顔は、怒っている様で、何かに絶望しているようで。。。
しばらくの沈黙のうち、少年が口を開いた。
「パパやママみたいに、お兄ちゃんも僕を置いてどこかへ言っちゃうの?」
少年の言葉を聞いて、張り詰めていた緊張が一気に解ける。
・・・どうやら、ただの迷子のようだ。
入りかけていた海から上がり、少年の手を引いて歩く。
少年は僕に手を引かれ、黙って付いてくる。
近くの交番にと思ったが、考えてみれば、ここは人気のない小さな砂浜。
交番どころか、民家すら近くにはない。
あたりを見渡してみても、少年の親らしき人は見当たらない。
「パパやママとは何処ではぐれちゃったの?」
不振に思い、後ろを歩く少年に問いかける。
何か、気に触る事を言ってしまったのだろうか・・・少年は急に立ち止まり、下を向いてしまう。
「・・・僕、迷子じゃないよ。。。」
「そうか・・・悪かったね。じゃぁ、早くママの所へ帰らないとね。ママは心配して探していると思うよ。」
「ママを探しているのは僕だよ・・・一年前、パパは僕をかばってこの海で・・・ママは3日前からお家に帰って来なくなった。。。
ねぇ、僕はいけない子なの?だから、パパやママは僕を置いてどこかへ行っちゃうの?僕の事はもう要らないの・・・?」
その言葉を聞いて驚愕する。
少年はそのまま泣き潜れ、僕はその場に立ち尽くす。
しばらくしても、泣き止む事の出来ない少年を抱き上げ、僕は彼の家へと急いだ。
「うーみーはー広いーなぁー、おおきーぃーなぁーーー♪」
小さな浜辺に彼の声が響き渡る。
「レクー、あまりはしゃぐな。危ないだろ。」
僕の前をくるくると回りながら走り回る少年は、始めて出合ったあの日より、一回り程大きくなった。
生きていく理由がない。
そう思っていた僕に、神様は思いがけない形で生きる理由というものをくれた。
今はレクという少年と一緒に、レクの母の帰りを待ちながら生活している。
でも・・・レクの母が見つかる事はきっとない。
でも、レクと僕は一緒に母の帰りを待っている。
「ママが帰ってくるまで・・・一緒に居てくれる・・・?」
あの日交わした約束を、今でも僕は守っている。
そして、これからも守っていく。
「もー貴緒ちゃん、何もたもたしてるの〜!」
少年が僕の手を引き、我が家を目指す。
「なぁーレク・・・ずっと一緒に居れるといいな。」
少年が驚いたような顔で振り返る。
「何、バカな事言ってんの。ずっと一緒に居るに決まってるでしょ。」
そう言って綺麗に笑った少年が、キミの笑顔と重なった。
おわったぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーー*´∇`*
これ1つ書くのに、2時間も掛かりましたよ〜。本当は、長編用のお話だったんですよ・・・これ。
ですけど、長編で書く時間が取れそうになかったので、短編で出す事に(;´▽`A``
削って削って・・・短くしたのでなんかね笑
もし、反響がよければ、長編でも書くかもしれません^^長編も読んでみたい!なんていう風変わりの方は、このかまでどうぞヾ(・ε・。)ォィォィ
長編では、貴緒さんの過去や・・・まぁいろいろ明らかになるわけですはい。でも、描いてってお願いしてくれないと、書かないと思うなぁ。
だって、大変なんだもん。読んでくれる人が居れば、がんばれるんだけどねぇ。
あと、相手の名前は出してませんが死ねたですね。ごめんなさい。
でも、キオさんはなくなった人を一生忘れる事はないと思います。
一番最後の文の様に、レクとその人を重ねてしまう事はあるでしょうけど。。。
でも、それはけして悪い事ではありません。
とにかく、1度の人生でこれほどまでに愛しいと思える人に、2人も出会えたキオさんはとても幸せなのでしょう。
執筆 2006 05 17